非上場株式の評価見直し、今から何を準備する? 経営者が整理しておきたい5つのこと

これまで4回にわたり、非上場株式の評価方法の見直しについて、設備投資・賃上げ、事業承継、株式移転のタイミングなど、経営との関係から考えてきました。2026年8月時点では、新しい評価方式はまだ確定していません。残余利益方式が採用されるのか、何年分の利益を使うのか、期待収益率や還元率をどう設定するのかなど、重要な部分は今後の検討事項です。そのため、現時点で新しい評価額を試算して対策を考える段階ではありません。

一方で、「制度がどのように変わっても必要になる会社の現状整理」は、今からできます。
シリーズの最後として、経営者が確認しておきたいことを5つにまとめます。

1.過去3〜5年間の利益を見る

今回の見直しでは、企業の継続的な収益力をより重視する方向が示されています。
そこで確認したいのは、
・過去3〜5年間の利益推移
・大きく増減した年の要因
・一時的な収益や費用
・本業から継続的に生み出している利益
です。

重要なのは、「今年いくら利益が出たか」ではなく、「通常どのくらい稼げる会社なのか」を把握することです。


2.純資産の中身を確認する

残余利益方式のイメージでは、収益力だけでなく簿価純資産も重要になります。
そのため、
・純資産はいくらあるか
・利益剰余金はどの程度積み上がっているか
・現預金や借入金はどう推移しているか
・数年間でBSがどう変化しているか
を確認します。
「自社株はいくらか」を考える前に、なぜ今の財務状態になっているのかを理解しておくことが重要です。

3.これから3〜5年間に何が起きるか整理する

次に見るのは将来です。
設備投資、賃上げ、新規事業、拠点開設など、今後予定している経営判断を並べます。
設備投資なら減価償却費だけでなく、生産性向上や売上への効果まで。
賃上げなら人件費増加だけでなく、人材定着や採用費削減、価格転嫁まで。

その経営判断によって、3年後、5年後の利益構造がどうなるのかまで考えておくことが重要です。


4.事業承継の時間軸を決める

事業承継を考えている会社では、「3年後に社長交代する」「5年以内に株式を移転する」といった大まかな時間軸を持つだけでも、準備すべきことが見えてきます。
株式だけではなく、
・後継者への権限移譲
・主要顧客の引継ぎ
・金融機関との関係
・幹部社員との関係
なども同時に考える必要があります。
株式の承継と、経営そのものの承継を一つの時間軸で考える。これがポイントです。


5.誰に何を相談するか決めておく

事業承継では複数の専門家が関わります。
自社株の正式な評価や相続税・贈与税、事業承継税制などの具体的な税務判断は税理士へ。
一方、
・どの事業へ投資するのか
・どの程度の利益を目指すのか
・賃上げと生産性向上をどう両立するのか
・後継者にいつ何を任せるのか
といったことは、経営そのものの問題です。
必要に応じて、金融機関、保険会社、中小企業診断士などとも連携することになります。
大切なのは、「誰に何を相談するのか」をあらかじめ整理しておくことです。

制度が決まる前だからこそ準備できることがある


今回の非上場株式評価の見直しは、まだ検討段階です。そのため、今の時点で新しい方式を前提に株式を動かしたり、経営判断を変えたりする必要はありません。
ただし、
利益を確認する。
純資産を見る。
今後の投資や賃上げを整理する。
事業承継の時間軸を決める。
相談する専門家を整理する。
こうした準備は、制度がどのような形になっても無駄にはなりません。


全5回を通してお伝えしたかったのは、自社株評価を「税金が増えるか、減るか」だけの問題として考えないということです。
利益、純資産、設備投資、賃上げ、後継者、事業承継。
自社株評価を考えていくと、結局は会社経営そのものに行き着きます。
今回の制度見直しを、自社の3年後、5年後を改めて考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。


※本稿は2026年8月時点で公表されている国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の資料等をもとに、経営面から考察したものです。非上場株式の評価方法の見直しは検討段階であり、今後内容が変更される可能性があります。具体的な株式評価、相続税・贈与税、事業承継税制その他の税務判断については、税理士等の専門家にご相談ください。


参考資料
国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」第1回〜第5回資料